『春』
『夏』
『秋』
『冬』



『初夏は緑の風の中で』

ケヤキは豊富に葉をつけた
ざざざーっと風に揺れている

目に痛いほど鮮やかに
ざざざーっと頭上で揺れている

胸が苦しくなるほどの緑の群れに
心を揺らされ揺さぶられ

初夏の緑の風の中で
永遠にここに居たい

だけど

この時は止められない
時は動いてこそ美しい

だから思うんだ 私は
この時を描こうと



『アカシアの並木道』

初夏の風に吹かれて
アカシアが揺れているよ
道の両脇に続くアカシアの並木道
若い緑の葉の間に
たくさんの たくさんんの
花房が鈴なりに
揺れている 揺れている
この季節 私の生まれた所は
アカシアに囲まれる

少しひんやりとした風に乗って
窓から甘い香りが吹き込んでくるよ
眠れない汗ばむ身体に心地よく
今日はどんな夢を見ればいい?
たくさんの たくさんんの
花房が夜風に
揺れている 揺れている
私の生まれた所は この季節
アカシアに抱かれる



『カッコウの鳴く夕暮れに』

小雨降る初夏の夕暮れに
カッコウは鳴いている

枝垂れ桜のたわわな枝にも
ケヤキの大樹にも
私の窓にも雨粒は踊る

飛沫をあげて通り過ぎる
タイヤの唸りの中に
カッコウの声が響く

一日の糧を得るために
私は今日もさんざん働き
あなたも疲れを溜めながら
懸命に働いている

薄墨色の空はもうすぐ
暮れようとしているが
蒸し暑さもしばし忘れる
カッコウの声が響く



 『詰草』

詰草が香る
あなたに会いたい

違う場所で
違う生き方
違う感じ方

でも
道端に咲く花を
美しいと思う
心は似ている

そんな
あなたに
会いに行きたい



『水色のカエル』

生まれる場所を間違えたか
それとも空から降ってきたのか
艶やかなトルコ石色のアマガエル

少しぐらい違っていてもいいよなァ
皆と同じ草色でなくてもいいだろう
おまえだって今ここで生きている




『風を感じる時それを描く時』

私が心ときめくのは揺れる緑や
風を感じる時それを描く時
私がその一部だと感じる時
そしてこの感覚をあなたと分かち合う時
私の胸は高鳴る どう表現しようかと
早く絵筆を動かさなければならない
この感覚に手の動きが遅れないように
急がなければならないと感じる時


『光』

夕立が上がり
真っ暗だった
海が 突然
降り注ぐ光に
輝き出した
光の船団は連なり
まるで 異国の
街の灯のようだ
たくさんの
祈りの灯のようだ


『ツバメの夕暮れ』

 今日は何月何日ですか?

二羽のツバメが梁にいて
黒い頭を傾げて聞いた

 今日は子どもが生まれた日

夕暮れの湿った空気に虫たちは低く飛び
ツバメらも高く低く飛んでは ひと休み

 明日の天気はどうだろう?

紅い喉を仰向けて 
 不意に飛び立つ 夕暮れの空

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