<メイホウギャラリー>
『今迄の作品』
『山は燃えている』
私はもっと寡黙になろう
この緊張感は何だろう
清々しい湿度を帯びた空気の中に
澄みきった速い流れの音を聞く
この森は どこからか砂糖を
焦がしたような匂いがする
ほら、ごらん
山が燃えている
針葉樹と広葉樹が混じり合い
だんだらに山は静かに
激しく燃えている
私はもう黙っていよう
この手からのみ画布に
色彩や音楽が流れ出すように
絵筆からのみ奔流のように
この美しさが表現されるように
他の出口はふさいでおこう
『静寂』
もの皆茜に染まる湖の夕暮れに
ヤマセミの声を聞く
二羽の鳥はつぎつぎと
水切りの小石の如く翼で
水面を軽く打ちながら進み
急上昇して樹の枝に留まった
そして ふいに飛び降り
一羽は橋の上を越え
もう一羽は橋の下をくぐり
消えて行った上流に
もの皆茜に燃える今は晩秋
湖面も鏡となって燃えている
湖に架る橋の上で私は
ヤマセミの求愛の歌を聴いた
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